卒論レジュメ20021028

小島 周一郎

「まちづくりにおける新交通システムの今後〜宇都宮を例に〜」

 

・聞き取り調査内容について

T宇都宮市新交通システム導入過程における進展経緯

出典:宇都宮市役所企画部地域政策室参考資料

1、事業目的

 宇都宮テクノポリスセンター地区を中心とする鬼怒川左岸地域と宇都宮市街地との連携強化

+交通渋滞緩和、地球環境の保護、高齢社会に対応

→安全で信頼性の高い交通体系の確立を目的とする

 

2、現在までの導入経過・予定

1995(H7)年度

 「宇都宮都市圏都市交通マスタープラン」において東西交通軸の強化を目的に新たな公共交通システムの必要性を提案

 

1997(H9)年度〜

 「新交通システム検討委員会」(栃木県、宇都宮市役所、宇都宮市街地開発組合、交通事業者等)を設立し、宇都宮市東部地域への新交通システム導入可能性を検討

 

2000(H12)年度

 「新交通システム導入基本方針」を策定

 

20012002(H1314)年度

 「新交通システム導入基本計画策定調査」を実施

 

今後

 「新交通システム導入基本計画」の策定へ→導入ルート、方式を決定予定

 

3、各計画概要

「宇都宮都市圏都市交通マスタープラン」

・公共交通ネットワーク化計画

→基幹バスの導入とトランジットセンターの整備、既存鉄道網及びバス網からなる基幹公共交通網とこれらを補完する支線バス網を配置、基幹公共交通網と支線バス網の主要結節点には乗り継ぎ利便性確保のためトランジットセンターを配置

 

*基幹バス

 バス専用車線(バスレーン)、専用信号の設置などのバス優先施策を重点的に実施し、高い定時性、速達性、快適性を確保するバスシステム

*トランジットセンター

 バスターミナル、駐輪、駐車場、商業施設、公共サービス施設などを併設した乗り継ぎ拠点

 

「新交通システム導入基本方針」

・沿線人口、施設、将来需要、導入空間、整備費などの比較検討の結果3ルートに絞り込む

・将来需要、事業費規模、乗降の利便性の優位からLRTを基本としてより詳細な調査、検討を進めることが適切

・パークアンドライド、バスアンドライドなどの端末交通システムを十分機能させることが必要であり、今後具体的検討が必要

・新交通システムの導入と一体になって機能する関連道路整備についても、具体的調査検討が必要

・事業採算性については、一定条件下において、長期的な資金収支を賄える可能性があるが、今後各種条件の具体性を高め、検討を探り、総合的な導入効果についても分析、評価を行う必要

・経営主体としては第三セクター方式が有力であるが、今後新たな整備運営手法の適用可能性を含めて検討を深める必要

 

「新交通システム導入基本計画」

→「新交通システム導入基本計画策定調査」

調査地域

宇都宮都心地域〜鬼怒川左岸地域(延長1015km)

 

4、新交通システム機種選択

機種を絞り込むための基本的考え

・需要に見合った輸送量を確保できるもの

→大量な東西交通をさばくには起動系が優位

・自動車から公共交通への転換を促進するもの

「利用意識調査」の分析結果ではLRTが基幹バスより優位

・明確な交通軸を形成できるもの

→交通の軸としてはバスより軌道系が優位(地図にも明示される)

・環境への負荷の軽減や高齢者等への配慮、都心部活性化など多様な導入効果が期待できるもの

 →LRTは二酸化炭素排出量がバスの3分の1。低床式車両で高齢者も乗降可能

・都市の規模や需要に応じた適切な建設コストで整備できること

 →整備コストはLRTAGTの約5分の1

 

LRT選択理由

・自動車からの利用転換を積極的に進め、明確な軸の構築や人と環境にやさしいまちづくりなどにおいては、バスよりも軌道系が優位

・軌道系の中では、大きく大別して、高架式のAGT、モノレールと地上式のLRTが存在するが、高架式は、コストが高く、乗降時の上下動に抵抗感が多い

LRTは高架式と比較して、乗換え抵抗、安心感、シンボル性、建設コストなどに優れており、総合的に評価してLRTを選択

 

U都心循環バス「スマイルバス」の現況

1、宇都宮まちづくり推進機構とは

・行政の持つ信頼性、民間の持つ経営力や多くの企業によるネットワークが活用できる公共と民間が一体になった第三セクター

・市、商工会議所から職員が派遣

・松が峰教会のライトアップ、ユニオン通りのポケットパーク整備etcの実施

・大通りの(セミ)トランジットモール化を計画(200311月予定)

 

2、「スマイルバス」実施詳細

事業目的

 中心市街地活性化のために商業力の強化と交通利便性を高め、「集客力の向上」に繋げていくための実験運行

 

実施過程

19992000年度 実施の検討

20014月〜 説明会、PR etc実施

719日  運行開始

1118   運行終了(123日間)

 

事業主体 宇都宮商工会議所

運行者  関東自動車株式会社

運行方向 両方向(2ルート)

運行時間 930分〜17(土日祝は19)

運行本数 46(土日祝は57)

運転間隔 20

停留所  42箇所(200m間隔)

料金   一律100

 

利用人数 58940

一日当たり利用人数 479(採算は一日約2000)

 

コスト

宇都宮市補助 2000(うち1000万は国庫補助)

商工会議所負担金 約680

運賃収入 約590

計 約3270(運行委託費は約2600万、その他広報費etc)

 

3、アンケート結果

バス利用者アンケート

実施期間 2001年9月114日、1014

実施方法 バス車内にてアンケート用紙を配布し郵送により回収

配布数/回収率 500/50.4%(252)

 

中心部への外出 増えた39.7%/変わらない45.6%

中心部への店への立ち寄り 増えた40.5%/変わらない40.9%

利用年齢層 〜30歳代36.5% /50歳代25.4%/80歳代38.1%

利用時間 〜10時台39.7%/15時台53.6%/それ以降6.7%

利用目的 買い物45.2%/娯楽・レジャー15.1%/業務9.5% の順

運賃 安い93.7%/普通1.6%/高い0.0%

P&BR促進について

 乗り継ぎ便利な駐車場があれば利用したい 23.6%

 割引制度があれば利用したい 19.3%

 利用したいとは思わない 2.9%

 自家用車は使わないがよい方策だと思う 25.8%

 よい方策だと思わない 2.5%

  無回答 25.8%

今後の継続 続けてほしい91.7%/必要はない0.0%/どちらともいえない0.8%

主な改善要望 運行時間帯の拡大、他の場所にも運行を

 

4、現状

20024月から関東バス()が「きぶな」として自主運行←商工会はサポートのみ(広告の作成etc)

・ルートは宇都宮駅を中心に反時計回りのルートのみに

・朝830分〜最終19(日祝日は18)

・一日43便(日祝日39便)(00153045宇都宮駅発車)

・バス停23箇所、一周26

・運賃は大人100/子ども50

・一日あたり利用人数()

4月 392

5  385

6  380

7月 458

8月 516

9  468

 

5、考察

・根本的に乗車人員が少ない、採算ラインの1/4(ただし、20024月から中心部バス運賃100円のわりに健闘)

・中心市街地への立ち寄り増加、高齢者の外出など一定の成果も

・「スマイルバス」と商店街との連携がほとんどない(本当に買い物客の取り込みが行われているのか疑問)

・多額の赤字をどう埋め合わせするか(2001年の実験運行では国、市1000万ずつの補助)

 

6、参考文献

「平成12年度都心循環バス運行計画策定調査業務報告書」20013月 宇都宮まちづくり推進機構

「平成13年度都心循環バス実験運行事業報告書」20023月 宇都宮商工会議所